フィギュアスケート・グランプリファイナル
いよいよ開幕しましたね
奇しくも今日、12月7日は
男子フィギュア界の若きレジェンド
羽生結弦さんの24歳のお誕生日です。
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ここ数年彼の成長を見守ってきたように思います。
さて今日は男子フィギュアをモチーフにした
短編小説(誉田哲也)を一つ紹介します。
なお羽生君がモデルとなった天才スケーター役を
陰で支える親友ケンジ役には、
グランプリ優勝候補のあのカレを抜擢しました。
二人のイメージ画像とともにお楽しみください。

《お話》
オレはケンジ、何のとりえもない帰宅部の中坊です。

ある時オレはお袋の勝手でスケート教室に入れられた。

で、行ってみたら、えっ?フィギュア~!

ムリムリムリムリ~四連続転倒しまくるオレの醜態を

オレより覚えのいい小学生のガキが爆笑してやがる~
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その時「大丈夫?」と手を貸してくれたのが彼だった

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「膝を内側に倒して、インサイドに乗るんだよ、
 強く蹴ろうとしないで押すつもりで…」
そう言って彼は、オレの手をとり一緒に滑る

えっ?男同士のペア・スケート…恥ずかしいけど

なんか上手く滑ってるし、みんな注目してくれて、
ちょっとイイ気分

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後で、彼がオリンピックを目指してる
超有名中学生であることを知った

けれど、やっぱり中学生、
オレなんかとは月とスッポンの彼も

何度もジャンプで転倒して、悔し泣きしてたっけ。

オレはそれをただ黙って見守ることしかできなくて

明くる日また彼のお荷物になるばかり…

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そんなある日彼が明日の大会で大技に挑戦するから
ぜひケンジに観に来てほしいと懇願してきた

そんなに真顔で見つめられると、オレもうダメだよ
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で「絶対行くよ!だから成功させてよ。」
って約束したのに、ついにオレは行けなかった

まさかそのタイミングで家が倒壊しちゃうなんて…

幸い家族は無事だったけど…
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…あれから三年後、ジュニア代表を決める選手権

やはり彼はそこにいた

オレは陰から彼の成長した姿を
一目見たいと客席に潜り込んでいた

彼の最初の大技はなんと4回転ルッツ!

先月ねんざした右足首がすでに悲鳴を上げていた

でもこの技だけは成功させたい、どうしても…!

その覚悟がオレに伝わってきた

オレは心の中で念じた
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彼がジャンプに入る

オレは見えない手で、彼の身体を抱きとめる

一回転、二回転、三回転…
時間が止まってしまったかのように

スローモーションで流れる

四回転、そして着氷の瞬間、
オレは彼の身体から優しく手をふりほどいた

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その瞬間湧き起こった大歓声が、すべてを物語った

演技を終えキス&クライに向かう彼はすでに嗚咽し

ベンチに座った瞬間、今までで一番の号泣をしてた
インタビューにも答えられないくらい…と思いきや

向けられたマイクに泣きじゃくりながら話す彼に、
苦笑するオレ
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「今回の四回転は、絶対成功させたかったんです。

 これは僕の親友との約束だったんです。
 僕の親友、ケンジは三年前震災で
 亡くなってしまったけど

 きっと今日のこの瞬間を
 見ていてくれたと思います…」
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あー、ばれちゃってましたか…

でも跳べたのは君の力さ

オレはただ見守るしかできないけれど

これからもずっと君を見守っていくよ、
君が滑り続ける限り…
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