白いもやの中に、裸のオレがいた。
その向こうには、やはり裸のサトシがいた。
「ねえ、僕たちはどうしてこんなところに
いるのだろう、服も着ないで…」
「さあ、わからないけど、確かここに来る前…」
「そう、僕は車に乗っていたはずなんだ。
だけど急に眠くなっちゃって…
で、気がついた時には目の前に
ガードレールがあって、それを突き破って…
その後どうなったかわからないけど、
ふと目を開けたら、ここにいたんだ。」
「オレも似たようなものかな…」
「じゃ、オサムも事故ったの?」
「まあね、車の中だったことには間違いない」
オレの答えは、半分ホントだけど半分ウソ。
オレは事故ってない。ただ自分から死にたくて、
確実に死ねる車の中を選んだだけ…。
「だんだんわかってきたよ、オサム。
僕たちは今、死にかけてるんだ。
けど完全じゃない。
ちょうど生死の境をさまよって、
こんなところにいるんだ。
たまたま僕たちは別々に事故にあって、
ここで一緒になったんだよ。」
「お前、高校の時のまんまで、すげえ妄想力だな。
で、この先どーなる?」
「どうもこうもないよ。今は何が何でも
生き返る方法はないか、探そうよ。」
「ああ…」と言いつつ、オレまったくやる気なし。
だってオレの方は死にたいんだもの…
サトシは白いもやの中を縦横無尽に動き回った。
けれどもそれがまったくムダであることは、
オレも、サトシにもちゃんと分かっていた。
そのうちサトシは疲れ切った様子で、へたりこみ
わんわんと泣き出してしまった。
オレはあんまりサトシが気の毒だったから、
あいつの肩に手を置いた。
「サトシ、お前ほんとに生きたかったんだよな?」
「うん…僕…まだやり残したことがあって…
このままじゃ…死ねない…」
「そうか…じゃ今オレとできることってないか?
このまま死ぬよりはいいだろ?」
サトシは驚いて、オレの瞳の奥を見据えた…
そしておずおずと申し出たのは
「オサム、僕を抱いてよ」の一言。
絶句した。たしかサトシは彼女もいたはずで
ゲイじゃない、むしろゲイはオレの方だ。
「こんな感じでいいか?」「うん。」
まるで夢の中のようだった。オレの大好きだった
サトシが今、オレの腕の中にいる。
オレは自分の快楽とサトシへの献身的な思いとで
頭ん中ぐちゃぐちゃになっていた。
そう、世の中すべてがいやになって、
死にたいと思っていたくせに
サトシへの思いだけは、今日まで生きていたんだ。
「あっ、イキそう…」そう先に漏らしたのは、
サトシじゃなくて、オレの方だった。
「イッてもいいよ。だけど僕にわかるように、
ちゃんと声に出してよ『イキたい』って…」
オレはサトシに言われるまでもなく、
もうすでに頂点まで昇りつめようとしていた。
「ああ…サトシ、オレ、イクよ。イキたいんだ。
イキたい、イキたい、イキたい!」…その瞬間、
オレは命の源が飛び散るのを、全身で感じた。
そして意識が遠のく中で、サトシが
「オサム、ありがとう。君はイキなよ。
…僕は僕でイクからね…」
と言ったのを確かに受けとめていた、
サトシの笑顔とともに…
そこで目が覚めた。
オレは病室のベッドに寝ていた、
酸素マスクが外された。
おふくろが「オサムが還って来た」と叫んで、
オレの上に泣き崩れた。
意識が戻ったオレに、医者が尋ねた、
何かほしいものはないか、と。
パンツがちょびっと冷たくなったのを感じたが
それには構わずに目を閉じて言った。
「もう十分です。だけど、また元気になったら…
親友のお墓参りにイキたい…」
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その向こうには、やはり裸のサトシがいた。
「ねえ、僕たちはどうしてこんなところに
いるのだろう、服も着ないで…」
「さあ、わからないけど、確かここに来る前…」
「そう、僕は車に乗っていたはずなんだ。
だけど急に眠くなっちゃって…
で、気がついた時には目の前に
ガードレールがあって、それを突き破って…
その後どうなったかわからないけど、
ふと目を開けたら、ここにいたんだ。」
「オレも似たようなものかな…」
「じゃ、オサムも事故ったの?」
「まあね、車の中だったことには間違いない」
オレの答えは、半分ホントだけど半分ウソ。
オレは事故ってない。ただ自分から死にたくて、
確実に死ねる車の中を選んだだけ…。
「だんだんわかってきたよ、オサム。
僕たちは今、死にかけてるんだ。
けど完全じゃない。
ちょうど生死の境をさまよって、
こんなところにいるんだ。
たまたま僕たちは別々に事故にあって、
ここで一緒になったんだよ。」
「お前、高校の時のまんまで、すげえ妄想力だな。
で、この先どーなる?」
「どうもこうもないよ。今は何が何でも
生き返る方法はないか、探そうよ。」
「ああ…」と言いつつ、オレまったくやる気なし。
だってオレの方は死にたいんだもの…
サトシは白いもやの中を縦横無尽に動き回った。
けれどもそれがまったくムダであることは、
オレも、サトシにもちゃんと分かっていた。
そのうちサトシは疲れ切った様子で、へたりこみ
わんわんと泣き出してしまった。
オレはあんまりサトシが気の毒だったから、
あいつの肩に手を置いた。
「サトシ、お前ほんとに生きたかったんだよな?」
「うん…僕…まだやり残したことがあって…
このままじゃ…死ねない…」
「そうか…じゃ今オレとできることってないか?
このまま死ぬよりはいいだろ?」
サトシは驚いて、オレの瞳の奥を見据えた…
そしておずおずと申し出たのは
「オサム、僕を抱いてよ」の一言。
絶句した。たしかサトシは彼女もいたはずで
ゲイじゃない、むしろゲイはオレの方だ。
「こんな感じでいいか?」「うん。」
まるで夢の中のようだった。オレの大好きだった
サトシが今、オレの腕の中にいる。
オレは自分の快楽とサトシへの献身的な思いとで
頭ん中ぐちゃぐちゃになっていた。
そう、世の中すべてがいやになって、
死にたいと思っていたくせに
サトシへの思いだけは、今日まで生きていたんだ。
「あっ、イキそう…」そう先に漏らしたのは、
サトシじゃなくて、オレの方だった。
「イッてもいいよ。だけど僕にわかるように、
ちゃんと声に出してよ『イキたい』って…」
オレはサトシに言われるまでもなく、
もうすでに頂点まで昇りつめようとしていた。
「ああ…サトシ、オレ、イクよ。イキたいんだ。
イキたい、イキたい、イキたい!」…その瞬間、
オレは命の源が飛び散るのを、全身で感じた。
そして意識が遠のく中で、サトシが
「オサム、ありがとう。君はイキなよ。
…僕は僕でイクからね…」
と言ったのを確かに受けとめていた、
サトシの笑顔とともに…
そこで目が覚めた。
オレは病室のベッドに寝ていた、
酸素マスクが外された。
おふくろが「オサムが還って来た」と叫んで、
オレの上に泣き崩れた。
意識が戻ったオレに、医者が尋ねた、
何かほしいものはないか、と。
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「もう十分です。だけど、また元気になったら…
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