ソラリスの島

美しき男たちの記憶を この島にとどめておこうと思います

まるで小説のような本当の話

僕の相棒

打ち明けてしまいますが、僕には
もう十何年来、連れ添った「相棒」がいます♡
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僕はカレのことが、出会った時から今日まで
ずっと大好きで、一度も目移りしたことはなかったです。
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カレとは、よく一緒に旅行に行くんですが、
相性バツグンで、どこへ行こうとも
常に心地よく、僕を誘ってくれます。
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カレはいつも元気で、アクティヴなところが
たよれるし、僕のちっぽけな悩みさえも
軽く吹き飛ばして、僕を奮い立たせてくれます。
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そんなカレの唯一の欠点は大食いだということで
出先でのカレの食費には、けっこう
ふところがイタイ思いをさせられます。
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でもカレはいつもタフで
大きなケガや病気もほとんどありませんでした。
日焼けした真っ黒な硬質の肉体が、
とても眩しくて、何よりたくましいカレでした。
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また一方でカレは寒さにも強く
どんな大雪の日でも犬のようにはしゃいで
駆け回っていたカレでした。
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そんな彼が突然、精密検査を受けなければ
ならなくなりました。
頑丈そうに見えたカレでしたが、長年の無理がたたって
もう身体のあちこちに、手の施しようのない
ガタが来ていたらしいのです。
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執刀医は最終宣告をしてきました。
「もうこれが最後のオペになるでしょう。
 持ちこたえたとしても、あと1年…」
それは言われるまでもなく、わかっていました。
13年という歳月は、僕よりもはるかに
カレには重く長い歳月だったのです。
人工呼吸器をつけ、心臓にもメスをいれた
カレは「これでまた走れるよ」と
相変わらず僕を誘ってくれています。
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僕は覚悟を決めました。
あと一年、カレともう一度
訪れたいところをめぐって
一緒に旅をしよう。
なつかしい思い出のあの場所から
行ったこともない新天地まで
どこまでもカレと走り回ろう、
カレの命が燃え尽きるまで…
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僕らがあと一年でどこまで一緒に
走れるのかは
神ならぬ身の知る由もないことですが、
僕の瞳に映ったカレの
走行距離はすでに30万kmに達しようとしています…
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ここもカレと行ったっけ…

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あらしのよるに…あとがき「時効」

これまで長らく掲載してきました
「あらしのよるに」シリーズに
お目を通しいただき、ありがとうございました。

実はこの連作は
僕の書いた記事の中では極めて異例で
自分の身近な現実に起こった出来事を
リアルタイムで書き綴ったものでした。

従って今目の前にいるカレのことを
カレの目を盗んではパソコンを立ち上げ
記事の続きをその都度、書き足していったんですけど、
たまたま僕がうっかり画面を開きっぱなしにしていて
カレに何となくバレちゃっていたんじゃないか
と思えるような兆候が何度か
カレの視線に現れてましたね。
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おそらくカレは、僕の下心に
うっすら気がついていたんだろうな…
最後の別れの瞬間のカレの瞳が
すべてを物語っていました。
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けれども僕は、カレとの純粋な関係に
一点の曇りも残したくなかった…
だからこそ、この日記を書き上げた直後に
非公開にし、お蔵入りを謀ったのです。

あれから10年近くたつのでしょうか。
そろそろ時効かなと思い、復刻してみました。
その時に偶然、当時の下書きで
カレののこした言葉が書き留めてあったのを
見つけました。
今さらですが、射すくめられた気持ちになり
忘れかけていたカレのことを
間近に、いとおしく思い出しました…

「形として何も残らなくても
 出会った人たちは
 いつも僕のそばにいてくれます。
 僕たちが、それを信じ、記憶している限り
 永遠に僕とあなたとは
 いっしょにいられますよ。」
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永遠に…人との一期一会とは
一瞬の出会いが永遠につながることもあるのです。

さて、ここからまた往生際が悪いのですが
このシリーズには、さらに3年後の
続編がありました。
合わせてお読みいただくと
再びカレに会えますが
それはまた、なんとも、せつなすぎる再会でした…













あらしのよるに…最終話「降車」

台風は無情にも待ってはくれなかった。
どんよりした雲間から、
いつしか小雨が降りしきっていた。

エンジンをかけバックミラーを見る。
なぜかそっぽを向いた彼の横顔が目に入った。
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ヒッチハイクで人を乗せるのは、気まぐれでもできるけど
今度は自分の車に乗せた人を降ろすのが
こんなにつらいものだとは思わなかった。
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思えば最初から見逃していたら
彼とは出会う事もなく、何も起こらなかったわけで
最初から出会わなかったものと
何度も言い聞かせて、未練を断ち切ろうとしていた。

二人とも口をきかないまま数10km走り続けた。
「そろそろ、この辺で…」の一言が、どちらとも出て来ない。
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「この辺だと、東京へ帰る車に拾ってもらえるかも…」
「あ、はい…」
「あ、でも、ここじゃ車を止めにくいから、
 もう少し先行くね。」
「あ、はい!」
「君なら、きっとすぐに別の誰かに拾ってもらえるよ。」
「あ、はい…」
「でも、この雨じゃ、目につきにくいかも…」
「あ、はい!」
「あ、あそこら辺なら、お店が一杯あるから大丈夫だよ。」
「あ、はい…」

車は静かに大型店舗の駐車場へ滑り込み
エンジンを静かに止めた。
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彼は後部座席に座ったきり動けないでいる。
「じゃあ、ここで…」
「あ、はい、お世話になりました。ありがとうございました。」
ドアが静かに開き、小雨が吹き込んだ。
「傘は?」
「カッパ持ってます。」
彼はまつ毛を小雨に濡らしながら、最後にニコッと笑った。
「あなたと出会えて、本当によかったです。」
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夢中で何か言い返そうとした。
「オレと…出会ってくれて、ありがとな。
 こんなオレでも、君のお役に立てて
 ほんとうに、うれしかったよ。
 また、いつか、どこかで、きっと会おうな。
 オレ、君のこと、絶対に忘れないから。
 なぜなら、君を…」

別れの言葉を考えているうちに、彼は微笑みながら
バタンとドアを閉めた…。
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車は元どおりに、ゆっくりと発進した。
遠くに何度も頭を下げる人影を見た。
「少しでも北へ」の段ボールが、風に揺れて
やがて雨中に溶け込んで消えていくのを
ワイパーで掻き消しながら、
もう二度と振り返らずに
オレは夢から、現実に向かって、
走り出そうとしていた。
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          ―完―

※僕と彼の一夜の物語はこれで終わりです
 …が、
 とてもこの結末では、欲求不満だという
 読者の皆様へ…
 せめてもの救いということで、
 実はこの物語にはアナザーストーリーが
 あります。
 次回「あとがき」として、つけ加えておきます…












あらしのよるに…第3話「台風の行方」

未明に目が覚めた。
乾燥機の音が止まっていた。
昨日はおかしな夢を見たのかと思ったけど、
玄関の見たことのない白いスニーカーが
現実、いや夢の続きに引き戻してくれた。

トーストにハムエッグ、コーヒーの用意をしながら
乾燥機からバスケットにまとめて衣類を移した。
ん、パンツの柄は見なかったことにしておこう(^^ゞ

8時…そろそろ起きてもらわなくちゃとノックし
そっと開けると、彼は半分起きていた、裸のままで…。
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「おはよう」の挨拶もどこへやら、いきなり出てきた台詞が
「パンツ一丁で大丈夫?」
「あ、はい、外で寝るより全然暖かかったんで」
いや、そういう意味合いじゃなくて…
とりあえず彼の衣類の詰まったバスケットで前を隠した(^^ゞ
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その場しのぎにつけたテレビからは
朝から台風情報で満載だった

「ヤバイよ。台風もうすぐ追いついちゃうよ。
 早く出発しないと…」
「あ、はい、どこへ?」
「どこへって…君、どこへ行くつもりなの?」
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「あ、はい、目的地はないんです。」
「目的地がない…どうして?」
「目的地があると、そこで終わっちゃうでしょ。
 たとえば目的地を青森って言っちゃうと、
 北海道へは行かれないし。
 僕、人生にも目的地がないみたいなんです。」
じゃあ目的地をオレにしちゃえば…
とあやうく口をすべらせそうになる。
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ふうん、目的のない人生ねぇ…
あれっ?ところでオレの人生の目的って何だっけ?
て言うか、オレが彼を乗せた目的っていったい?
二人の終着点はどこにあるのだろう?
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「とにかく、さっさと支度しようよ。これで暴風域に入ったら
 次に誰かに拾ってもらうの大変だよ。」
「…あ、はい…」
彼の返事にしばしの間があったように聞こえたのは
きっと彼かオレのどちらかが、この時を引き止めているから
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台風の接近が、彼と過ごす残り時間を
あと数時間に押し縮めていた…

        ―次回、最終話に続く―






あらしのよるに…第2話「乾燥中」

突然のりりしいエトランゼに
部屋の空間が妙に揺らいで見えた。
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「とりあえず何か食う?」
「あ、はい、いただきます。」
今どきの若い子は遠慮を知らないのか、
いや、無用の遠慮をしないことが
彼なりの気遣いだということを
後になってようやく気づくことになる。
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彼は出された料理はすべてたいらげた。
どんなに不味くても、腹一杯になっていても
嫌な顔一つせず、喜んで食べてくれた。
そうしてオレたちはお互い向かい合い
話をはずませ、何度となく見つめ合っては
微笑みを交わした。
4時間前は見ず知らずの他人だったなんて…。
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「じゃあシャワーでも浴びる?」
「あ、はい、入ります。」
「脱いだ物は洗濯して乾燥しとくから、
 ついでに洗いたい物があれば入れておいて。」
「あ、はい、助かります。」
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しんと静まり返った部屋に
シャワーの音だけが途切れ途切れに聞こえてくる。
隣室にめったに敷かない来客用の布団をしつらえる。

「上がりました。」
「ドライヤーは洗面台にあるから。
 あと君の布団はそっちの部屋。
 オレ、シャワーしてくるけど
 待ってなくていいから。
 疲れただろ。寝てていいよ。」
そこまで一気にまくしたてて
風呂場に飛び込んだ。
ボディーソープの甘い香りに混じって
彼の体臭がかすかに残っていた。
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この後、もちろんオオカミになどなれない。
お互いに健全な夜を過ごすことを固く決めていた。
それがオレを信じてついてきてくれた彼への
真摯なおもてなしだから。

ただ、どうしても誘惑に負けてしまったのが
風呂上がり、彼に貸してやったバスタオルに顔をうずめ
己の裸体の隅々まで拭いてしまったことだけ
ここに懺悔します。
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その夜オレたちはふすまを隔てた2つの部屋で
どちらからともなく深い眠りに落ちた。
まるで夢の途中から、また別の夢に突入した二人のように
心だけは寄り添いながら。
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台風が次第に近づいてくる気配にも気づかぬままに
彼の身につけていたもの一切の入った乾燥機のドラムだけが
夜の静寂の中、ヴィーンと音を立てて旋回していた…

 ―第3話に続く―






あらしのよるに…第1話「北へ」

そこに君がいた。
北風吹きすさぶ夕刻に
Tシャツ一枚で震えていた。
「乗せてください」と書かれた
段ボールの切れ端を持って。
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いったんは速度を落とさず通り過ぎたが
魔が差したか、やがてUターンすることになる。
それが彼との数奇な旅の始まりだった。
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「どこまで行くの?」とかけた声に驚いて
振り向く彼の真っ直ぐな瞳に射すくめられ
内心オレの方がうろたえてしまった。
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「少しでも北へ」
「北へは行かないけど、東なら行くよ。」
「じゃあ東へ」
「乗って」
「ありがとうございます!」
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それがヒッチハイカーのマナーなのか
助手席を遠慮して後部座席に乗り込んだ。
バックミラーに映る彼と視線が合う。
目をそらさずににっこりと笑う彼に
思わずオレの方が目を伏せた。
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やがて辺りは夕闇に包まれ
ヘッドライトに照らされながら
いずことも知れぬ目的地へと
二人はひた走ることになる。
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二言三言の会話で、彼の素性はわかった。
出身は沖縄(どうりで南国風のイケメンだ)
大学を卒業し、国家試験を受け、結果が出るまでの間
1人であてのない旅がしたかったとのこと。
まるで追っ手の台風から逃れてきたような…。
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1時間後…
「すいません。雨でぬれちゃって…
 着替えてもいいですか?」
「えっ?あぁ、どうぞ…」
返答を待たずに脱ぎ始めた彼の筋肉質の体は
いさぎよく白く闇に浮かんだ。
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2時間も走ったろうか…高速道のSAで
「で、今日はどこに泊まるの?」
「考えていませんでした。野宿でもしようかと。」
「それじゃあ凍え死んじゃうよ。」
「じゃ近くのバックパッカーの宿に行きます。」

その日は連休半ばでバックパッカーの宿は
どこも満室で断られているようだった。

「やっぱりダメでした。」
「…じゃあ、オレんちに来る?」
「…あ、はい、お願いします。」
至極当然の成り行きのように、オレたちは引き返し
一条の光に吸い寄せられるように一軒家を目指した。
通い慣れた道のはずなのに今夜は
やけに遠く神秘的に曲がりくねっていた。

…こうしてオレたちの逃避行は始まることになる。
そして行き先がわからないのは、彼ではなく
間違いなくオレの方だった…。
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              ―第2話へと続く―

※この記事は以前実況をライブで配信したものです。




 

ウラシマ

以前どこかでお会いしましたか?

そう聞きたくなるような見覚えのある
イケメンが目の前にいた。

しかも全裸で…
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相変わらず顔も身体も美しかった。

それだけに強烈な印象となって覚えていた。

しかしいったい、いつ、
どこで会ったのかが思い出せない…

一期一会の行きずりの相手だったか、

それとも数多いるボーイの1人だったか、

あるいはGVに出演していた男優さんか?

でもそれなら、身体1パーツを見ただけで

もう一つの記憶が呼び覚まされるはずだが

いくらソコを凝視しても思い出せない(笑)
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思い悩みながら彼をくまなく観察していた。

彼もやがて、オレの視線に気がついたが

適度な距離間で相変わらず全身を開放していた

思案に思案を重ね、やっと思い出した。
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全裸でいたから、わからなかったのだ。

以前出会った時は細身のスーツを着てたから

こんなに筋肉質で野性的な体型とは
結びつかなかったのだ

そうか、こんな見事な身体をしていたんだね

久しぶりに見られてよかった…

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しかしそのブランクの年数を数えてみた時

恐るべき事実に気がついてしまった

以前彼と会ったのは

20年近く前になるはずだった

まさか生身の人間が20年もの間

肉体的に年をとらずにいられるわけがない

ところが目の前の彼は
以前と全く同じ美しさであるばかりか

いや、むしろ以前より若返っていた

どう見ても20代前半にしか見えない

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あり得ない

もし現実に合理性のいく解釈をするならば

それは20年前の彼と瓜二つの赤の他人が

今目の前にいると考えるのが自然だ

しかし見れば見るほど20年前の彼だった

しかも当時見られなかった彼の肉体の
すべてが今は包み隠さずに披露されていた

それは想像以上に神々しかった
とと

神は時として、小粋な悪戯を仕掛けてくる

オレは何とはなしに、つぶやいていた

「ウラシマ…?」

不思議そうに小首を傾げた彼のしぐさは

20年の時を経ても変わらなかった…

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昔、昔ウラシマは
助けたカメに連れられて
龍宮城に行ってみれば…
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絵にも描けない美しさ
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朽ち果てることのない美もあってほしい…
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僕が失くしたもの《後編》

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「僕たちは初対面じゃなかったかも知れない。
 Z公園に行ったことはない?」
そう最初の問いを発してから、約1時間待ち…
いつも僕からメールを送った時は速攻で返して来る
Y君でしたが、この日は全く返信がなかったのです。
その無反応さから逆に「ああ、やっぱりそうか。」
と悟ってしまいました。
そこで次に
「わかったんだね。でも僕はこれまでどおり、
 君と友だちでいたいんだけど…」
と送信して待つこと1時間…
返信のないまま、時計の針だけが動いていきます…
窓の外は、いつしかぽつりぽつりと雨に…
何かいけないこと言った?そう思いつつも
僕はひたすら彼をつなぎとめるべく
最終宣告を試みました…
「僕はいつの時のどんな君も好きでした…」
それは狙いを外した流れ弾のように、
雨中へと消えていったかのようでした。
外は雨ばかりか風までもが勢いを増し、
何かを激しく打ちつけています…
そしてこの、いつ明けるとも無い
沈黙の底から噴き上げてくるのは、
Yのすさまじい憎悪だと気がついた頃には、
もうすべてが致命的に終わっていました。
その憎悪とは、いったい何なのか、
今でこそ見当がつくのですが、
当時の僕にはまったくわからなかったのです。
ただその憎悪こそが、僕らから、
かけがえのない大切なものを消し去りました。
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その後、Yと会うことは二度とありませんでした。
彼はその年に退職し、県外の別の業種へ
再就職したという話を風のうわさで聞きました。
僕には今も心のどこかに出会ったばかりの彼が
メールで送ってくれた言葉が突き刺さっていて、
思い出すたび、たまらなく胸を殴りつけ、
自分の息の根を止めたくなります。

僕が踏みにじってしまった、Yからの最初の挨拶…
「…本当に尊敬できる人を見つけました。
僕はどこまでもあなたと同じ道を進んで行きたい。
そしていつか、あなたのような人になりたいと思います…」
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この話のエンディング曲は、昨年他界された森田童子さんの
「ぼくたちの失敗」しか思いつきません…

「僕が失くしたもの」《完》

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僕が失くしたもの《中編》

ある日いつものようにY君と別れた後の帰り道
ぽつんと独りになった時に、その悪寒は
突然の大雨のように降りかかってきたのです。
その日Y君が
「以前X町で3年ほど勤務したことがあります。」
と語ってくれた一言が引き金となりました。
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X町…実は僕も同じ頃、近くに勤めていたのです
Y君には黙っていたけど。
その町には、僕の封印したい過去がありました。
実はその町のはずれにZ公園というのがあって
その筋では有名なゲイのハッテン場でした。
僕はふだんなら決して地元のハッテン場なんか
近づかない人間です。
ところが当時若さゆえの持て余した性欲と
その頃の将来への漠然とした不安とが相まって
一度だけその性地へ足を踏み入れたのです。
そして噂のトイレで待っていると程なくして
まだ学生のような男子が、僕の隣に立ちました。

それから排尿時間とは思えぬ長い時を、
僕らはお互い便器に向かい立ち尽くしてました。
ついに僕はこらえきれず小便器を離れて
個室に入りドアを開けていました。
すると滑り込むように個室に入ってきた
男子の顔を、今はっきりと思い出したのです。
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僕は最初からYと出会っていた…
いや、それどころか僕たちはすでに
二匹の獣のように、狭くて汚い檻の中で、
吐息だけを交わし、お互いをむさぼり合っていた。
しかも彼の樹液の味まで、僕は知り尽くしていた…

なぜYと出会った時に、すぐにわからなかったか
不思議に思うかも知れませんが、
数年前、薄暗闇の中でのわずか数十分間の逢瀬では
記憶もおぼろげだったのです。
ただ僕は、当時あの町にいたYが
彼であったことを直感的に確信しました。
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そう思えば思うほど、何から何まで
Yに対する一連のわだかまりに納得がいくのです。
しかし一方でYがあの時の僕を覚えていて
近づいて来たとは、到底思えません。
彼にとってその時の僕は、
行きずりの男としか見えていなかったはずです。
僕は、この疑念、もしくは確信を
Yに告げるかどうかを一晩中悩みました。
ただこれまで交友を深めてきた二人の関係が、
どうにかなってしまうほど、僕たちは、
うぶな子どものままじゃないだろうと結論しました。
午前零時とともに単刀直入なメールを彼に送ります。
「僕たちは初対面じゃなかったかも知れない。
 …Z公園に行ったことはない?」
そして彼の裁断と次の返信を待ち続けたのです。
それが、とどめの一撃になったとは知らずに、
ずっとずっと…
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(後編につづく)














僕が失くしたもの《前編》

これだけ長く生きていると過去に
何度か手痛い失敗談があったわけで
今日はあえてそんな僕のとびきりの
しくじり体験を紹介したいと思います。

僕はあまり人と深くおつきあいするのは
得意ではない人間ですが
ある時ひょんな拍子で出会ったY君とは
本当に仲良くしていた時期がありました。
きっかけは仕事がらみの出張会議の席で
なんか僕が偉そうに意見を出した時に
真向かいに座っていて「うんうん」と
うなずいていてくれたのがY君でした。
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その後も何度も目が合って
一日つぶしてのくだらない会議が
彼と見つめ合う二人だけの
熱いミーティングと化したことに
主催者には後ろめたい罪悪感を感じつつ
そのくせ場違いな感謝をしていたのです。
会議がお開きになると
案の定Y君の方から歩み寄って来てくれて
初対面の挨拶もそこそこに
「あなたの発言に感銘を受けました。」と
伝えに来てくれ、うろたえる僕をよそに
「また機会があれば、色々教えてください。」
という嬉しい言葉と爽やかな笑顔を残して
彼は去っていきました。
その数日後、Y君からの
「もう一度お会いして話がしたいんですが…
 一緒に食事をしながらでも…」のメールに
有頂天になり舞い上がってしまったのは、
言うまでもありません。
僕の方が年上なのは歴然としていたので
それっぽくジャケットを羽織って行くと
今どきの若者のカジュアルなスタイルで
彼は待っていてくれました。
いかにも女の子にモテそうなイケメンのY君
彼がノンケであることは承知していながらも
僕たちは前回のスーツ姿同士では
分かり合えなかった素の部分を出し合いながら
交わした会話と食事は本当に楽しかった。
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「まるではたから見たら、男同士で
 デートしてるみたいじゃん。なんかゴメン」
「いえ、かえって光栄です。
 友達に自慢したいぐらいです。」と言うY君
僕は目の前で溶けだしたアイスクリームのように
あま~く崩れてしまいそうでした。
その後も何度か彼と食事をしたり映画を観たり
そしてついには温泉まで一緒に入りました。
でも僕たちはノンケの男同士の友情のように
どこまで行ってもプラトニックだったのです。
そうお互い信じていました。
けれども、そんなにお互いをさらしていながら
僕らはまったく気がつかなかったのです。
気づかなくてもよかったことに
僕が気がついてしまったことが
すべてを失うことになろうとは
その時にはまだ見抜けませんでした…
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(中編につづく)







舟人の紹介

ラシン

初めまして。ラシンです。
ほぼ「裸身」ですが
ここを「羅針盤」として
進んでいく方向を
模索したいと思います

漂着した方の人数
  • 累計:

上陸記念にスタンプを
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