ソラリスの島

生き物であり、人であり、男であり、 ゲイであり、◯◯である、 僕のささやかなエッセイです。 どこからでもお読みいただけたら幸いです。

まるで小説のような本当の話

カッコいい男子の1パーツに

おそらく僕が初めて憧れを感じた男子は
小学校の同級生のシュウ君だったかと思います。
とにかくカッコよかったし
顔を見てるだけでシアワセでした。
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しかしながらお年頃になると
それなりの欲望が出てきて
もっとシュウ君の「中身」を見たいな~と
思うようになりました。
それで体育の授業の着替えの時
思わずチラチラと見ては
勘づかれないように視線をそらしていたら…
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突然「あれっシュウ、パンツからはみチンしてるぞ」と
誰かの叫び声が…
思わずふり返って見たけど、時すでに遅し⁈
シュウ君は顔を真っ赤にして、パンツに収めた後でした。
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「シュウって意外とデカイな~」というツッコミが
見てない僕には拷問のようにツラかったです。
それからもシュウ君のチン◯をいつか見たいという
夢は冷めやらず
トイレで隣になった時はチラッと横見したけど
シュウ君はあの時以来ガードが固くて
一分の隙もなく断念。
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また修学旅行でのお風呂に一縷の望みを賭けていたけど
班別行動となり、シュウ君とは同浴すらかないませんでした。
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こうして僕の初恋?は成就することなく
終わっていったのですが
さて、その後の人生の中でまさか
カッコいい男子君の1パーツが
見たいだけ見られるような時代が来るとは
夢だに思っておりませんでした。
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まずは温泉・銭湯で
本当に無数のカッコいい男子君のパーツを
ごくさりげない形で堪能してきました。
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続いてネット画像やゲイビ動画で
カッコいい男子君の1パーツが、
手に取れるほどの近さで
見られるようになったのは、
やはり現代ならではの大きな恩恵だったと思います。
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そして、とある場所で、思わぬイケメン君が
スルッとパンツを脱ぐリアルなシーンに
僕は何度も立ち会ってしまいました。
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こうして僕はかつて見逃がしたシュウ君の代わりに
より多くのカッコいい男子のパーツを
際限なく見ていくことになります。
もうすでに数千本は超えてると思います。
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それだからもう、とっくにあの時の
シュウ君のはみチンを見られなかった無念は
晴らせたはずなのですが
やっぱりいまだに悔しく感じるのです。
もしかしたら僕は、あの時のシュウ君の1パーツを
生涯追い求めているのかも知れません。
なぜだろう…?
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シュウ君とは中学までは一緒でしたが
高校は別になってしまいました。
それから風のうわさに聞いた話ですが
高校在学中に乗っていたバイクで
事故に遭い、シュウ君の下半身はそれきり
動きを止めてしまったそうです…
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今はもうかないませんが
もしも僕がシュウ君ともっと近しい関係であったなら
シュウ君の着替えを手伝ったり、抱きかかえて寝かせたり
下の世話をしたり、お風呂に入れてあげたり
彼の1パーツになってあげたかったです…
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合わせて読みたい、失われた物語はこちら

障がい者のパートナーのことを知りたいと思われたらこちら






















甘い罠だとわかっていながら

よく未成年者へのわいせつ行為が
醜悪な犯罪としてネットニュースでも
ことさら大きく取り上げられておりますが、
僕的には加害者が一方的に悪いとは言えない
「とある事情」があるのではないか
と訝しく思われてなりません。
これは自らの体験にもよりますが…。
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というのも僕の人生の中で今振り返ると
明らかに憧れ以上の感情をもって
熱い視線を合わせて来る中高生の男子が
少なからずいましたから。
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彼は自分の若さと美しさには
絶対の自信をもっていました。
そしてそれを武器に大人に対しても
果敢に自分の魅力を見せつけ
当然相手は自分に夢中になってくれると確信し
じりじりと間合いを縮めてくるのです。
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最初は見つめてくることから始まりました。
こちらがつい目を合わせてしまうと
手招きするかのような視線と笑顔を返してくる。
そのうち腕や肩、背中、指等にさり気ない
ボディタッチをしていく。
さらにはその部位に唇や息、
そしてさらなるモノを押し当ててきて…。
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これって子どもの大人への甘えの延長でしょうか?
いやいや年齢的にも身体の成熟度から言っても
特別な意識をもって迫ってきているように思います。
もちろん、即座にきっぱりとかわしていますが、
当時は「こいつオレのこと好きなのか?」と
その気にさせられるような甘い罠には
ほんと参りました。
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しかしながら、自分の記憶をさらにさかのぼっていくと
僕自身が罠をしかけてしまったケースを
今忽然と思い出しました。

それは中学生のころだったかと思います。
当時の僕は無口でおとなしく軟弱に見える割に
勉強や芸事でちょっと目立つ生意気なやつでした。
まさにかっこうのイジメの標的になりやすいタイプです。
※参照画像は未成年者ではありません。
 アジア某国の成人モデルさんです。
 もちろん僕に似ているというわけではありません。
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そんな僕を面白く思っていない者の1人が
2つ隣りのクラスにいたSでした。
Sはガキ大将と言うよりはチンピラ的な性格で
よく難癖をつけたり、人の物を盗って返さなかったり
毎回何かと僕にしつこく絡んで来ていました。
ただSに逆らうとかなり面倒なことになると思って
僕はただSに無抵抗に服従していたのです。
それで図に乗ったSはプロレスや柔道で覚えた技を
よくかけてきては、僕を倒してマウントすることを
何よりのうっぷん晴らしとし始めたのです。
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そんなある日、校庭の砂場に連れていかれ
今日は相撲?でお前をぶち負かしてやるとSは管を巻き
さっそく取っ組み合った時に、
胸ぐらをつかまれ揺さぶられ
Yシャツの第2ボタンがポロッと取れてしまいました。
僕はもうSのオモチャになってやるしかないと観念し
ボタンが取られちゃうよりは最初から外しておこうと
残りのすべてのボタンを、何気なく自分で外しました。
貧弱な胸元が露わになったまま、僕はSに押し倒され
Sは馬乗りになって、僕の両腕を押さえつけました。
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と、その時です。
「アンタたち、何してるの!もしかして…?」
という先輩の女子グループの叫びが耳元に届きました。
Sは初めて自分たちの姿を俯瞰し
これはどう見てもあの行為と見間違えるだろうと
今さら気がついたようでした。
僕は砂を振り払ってYシャツのボタンをあわてて留め
無言でつっ立っているだけで十分でした。
Sが「そんなんじゃねぇよ!」と真っ赤になって
ムキになって弁明しようとすればするほど
先輩女子たちの妄想とウワサは拡散し
ついにはもう学校で知らない者は先生たちぐらいでした。
Sは二度と僕には近づかなくなりました。
ただそれっきり僕の脳裡から
Sがその先どうなっていったかという
不都合な記憶はすっかり消えてしまったのです。
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けれど今思い返すと1つだけ引っかかることが
ありました。それは…
あの時、僕の上に馬乗りに覆いかぶさったSの
瞳孔の奥に、ほのかに僕を求め慕う一途さを
かいま見ていたという瞬間の記憶があるのです。
SはSなりに僕をいたぶりつつも愛していたのかも知れない。
とすればSこそ哀れな犠牲者であり
Sを追い込んだ僕は裏切り者だったのではないでしょうか
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これと同じ原理で
実は加害者も被害者であり
被害者こそがある意味加害者にもなるという
パラドックスが
年齢や力の差を超えた両者にも
成立するような気がして…

すみません、社会常識的に判断して
僕の考えは間違っていますね。
この話はここまでにしときます。
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合わせて読んじゃいけない?話がこちら









ピカデリーサーカスで待ってるから

「ピカデリーサーカスで会おう」
そこはロンドンではお決まりの
待ち合わせスポットで
僕もかつてこの広場にしゃがみこんだ
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渋谷のハチ公もそうだけど
待ち合わせ場所にはたいてい
人目につくシンボルがあって
ピカデリーサーカスにも
天空を翔けるエロスの像がある
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エロスはギリシャ神話の愛の神
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彼は美の女神アフロディーテの息子なんだけど
ある時人間の美女プシュケに母が嫉妬し
人を憎む鉛の矢を撃ち込んで来いと命じられる。
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ところがエロスは誤って自分の脚に
人を愛する金の矢を刺してしまう。
それでエロスはプシュケを一途に愛するのだが
神であるエロスは、自分の美しい姿を隠し
プシュケとは暗闇の中でしか会えない。
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プシュケの姉たちは、その男は怪しい
魔物に違いないから、正体を確かめて
殺してしまえと、そそのかす。
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とうとうプシュケは、エロスをだまし
その美しい男の姿を垣間見たが
禁忌が破られたために、プシュケは
2度と再びエロスに会うことは
かなわなかったというお話(だったかな?)
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愛は求めども拒まれ、拒めども求められ
真実の愛に気づけぬままに見失い、
失意の悲しみの果てに追いやられても
それでもなお、人は愛し続けるものなのか
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あれから10年…
もう一度あの広場へ訪れ、待っていたならば
あの時の自分たちに再び会えるのだろうか…
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英国ネタをいくつか

僕の相棒

打ち明けてしまいますが、僕には
もう十何年来、連れ添った「相棒」がいます♡
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僕はカレのことが、出会った時から今日まで
ずっと大好きで、一度も目移りしたことはなかったです。
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カレとは、よく一緒に旅行に行くんですが、
相性バツグンで、どこへ行こうとも
常に心地よく、僕を誘ってくれます。
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カレはいつも元気で、アクティヴなところが
たよれるし、僕のちっぽけな悩みさえも
軽く吹き飛ばして、僕を奮い立たせてくれます。
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そんなカレの唯一の欠点は大食いだということで
出先でのカレの食費には、けっこう
ふところがイタイ思いをさせられます。
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でもカレはいつもタフで
大きなケガや病気もほとんどありませんでした。
日焼けした真っ黒な硬質の肉体が、
とても眩しくて、何よりたくましいカレでした。
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また一方でカレは寒さにも強く
どんな大雪の日でも犬のようにはしゃいで
駆け回っていたカレでした。
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そんな彼が突然、精密検査を受けなければ
ならなくなりました。
頑丈そうに見えたカレでしたが、長年の無理がたたって
もう身体のあちこちに、手の施しようのない
ガタが来ていたらしいのです。
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執刀医は最終宣告をしてきました。
「もうこれが最後のオペになるでしょう。
 持ちこたえたとしても、あと1年…」
それは言われるまでもなく、わかっていました。
13年という歳月は、僕よりもはるかに
カレには重く長い歳月だったのです。
人工呼吸器をつけ、心臓にもメスをいれた
カレは「これでまた走れるよ」と
相変わらず僕を誘ってくれています。
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僕は覚悟を決めました。
あと一年、カレともう一度
訪れたいところをめぐって
一緒に旅をしよう。
なつかしい思い出のあの場所から
行ったこともない新天地まで
どこまでもカレと走り回ろう、
カレの命が燃え尽きるまで…
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僕らがあと一年でどこまで一緒に
走れるのかは
神ならぬ身の知る由もないことですが、
僕の瞳に映ったカレの
走行距離はすでに30万kmに達しようとしています…
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ここもカレと行ったっけ…

合わせて乗りたい記事はこちら








あらしのよるに…あとがき「時効」

これまで長らく掲載してきました
「あらしのよるに」シリーズに
お目を通しいただき、ありがとうございました。

実はこの連作は
僕の書いた記事の中では極めて異例で
自分の身近な現実に起こった出来事を
リアルタイムで書き綴ったものでした。

従って今目の前にいるカレのことを
カレの目を盗んではパソコンを立ち上げ
記事の続きをその都度、書き足していったんですけど、
たまたま僕がうっかり画面を開きっぱなしにしていて
カレに何となくバレちゃっていたんじゃないか
と思えるような兆候が何度か
カレの視線に現れてましたね。
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おそらくカレは、僕の下心に
うっすら気がついていたんだろうな…
最後の別れの瞬間のカレの瞳が
すべてを物語っていました。
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けれども僕は、カレとの純粋な関係に
一点の曇りも残したくなかった…
だからこそ、この日記を書き上げた直後に
非公開にし、お蔵入りを謀ったのです。

あれから10年近くたつのでしょうか。
そろそろ時効かなと思い、復刻してみました。
その時に偶然、当時の下書きで
カレののこした言葉が書き留めてあったのを
見つけました。
今さらですが、射すくめられた気持ちになり
忘れかけていたカレのことを
間近に、いとおしく思い出しました…

「形として何も残らなくても
 出会った人たちは
 いつも僕のそばにいてくれます。
 僕たちが、それを信じ、記憶している限り
 永遠に僕とあなたとは
 いっしょにいられますよ。」
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永遠に…人との一期一会とは
一瞬の出会いが永遠につながることもあるのです。

さて、ここからまた往生際が悪いのですが
このシリーズには、さらに3年後の
続編がありました。
合わせてお読みいただくと
再びカレに会えますが
それはまた、なんとも、せつなすぎる再会でした…













あらしのよるに…最終話「降車」

台風は無情にも待ってはくれなかった。
どんよりした雲間から、
いつしか小雨が降りしきっていた。

エンジンをかけバックミラーを見る。
なぜかそっぽを向いた彼の横顔が目に入った。
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ヒッチハイクで人を乗せるのは、気まぐれでもできるけど
今度は自分の車に乗せた人を降ろすのが
こんなにつらいものだとは思わなかった。
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思えば最初から見逃していたら
彼とは出会う事もなく、何も起こらなかったわけで
最初から出会わなかったものと
何度も言い聞かせて、未練を断ち切ろうとしていた。

二人とも口をきかないまま数10km走り続けた。
「そろそろ、この辺で…」の一言が、どちらとも出て来ない。
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「この辺だと、東京へ帰る車に拾ってもらえるかも…」
「あ、はい…」
「あ、でも、ここじゃ車を止めにくいから、
 もう少し先行くね。」
「あ、はい!」
「君なら、きっとすぐに別の誰かに拾ってもらえるよ。」
「あ、はい…」
「でも、この雨じゃ、目につきにくいかも…」
「あ、はい!」
「あ、あそこら辺なら、お店が一杯あるから大丈夫だよ。」
「あ、はい…」

車は静かに大型店舗の駐車場へ滑り込み
エンジンを静かに止めた。
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彼は後部座席に座ったきり動けないでいる。
「じゃあ、ここで…」
「あ、はい、お世話になりました。ありがとうございました。」
ドアが静かに開き、小雨が吹き込んだ。
「傘は?」
「カッパ持ってます。」
彼はまつ毛を小雨に濡らしながら、最後にニコッと笑った。
「あなたと出会えて、本当によかったです。」
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夢中で何か言い返そうとした。
「オレと…出会ってくれて、ありがとな。
 こんなオレでも、君のお役に立てて
 ほんとうに、うれしかったよ。
 また、いつか、どこかで、きっと会おうな。
 オレ、君のこと、絶対に忘れないから。
 なぜなら、君を…」

別れの言葉を考えているうちに、彼は微笑みながら
バタンとドアを閉めた…。
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車は元どおりに、ゆっくりと発進した。
遠くに何度も頭を下げる人影を見た。
「少しでも北へ」の段ボールが、風に揺れて
やがて雨中に溶け込んで消えていくのを
ワイパーで掻き消しながら、
もう二度と振り返らずに
オレは夢から、現実に向かって、
走り出そうとしていた。
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          ―完―

※僕と彼の一夜の物語はこれで終わりです
 …が、
 とてもこの結末では、欲求不満だという
 読者の皆様へ…
 せめてもの救いということで、
 実はこの物語にはアナザーストーリーが
 あります。
 次回「あとがき」として、つけ加えておきます…












あらしのよるに…第3話「台風の行方」

未明に目が覚めた。
乾燥機の音が止まっていた。
昨日はおかしな夢を見たのかと思ったけど、
玄関の見たことのない白いスニーカーが
現実、いや夢の続きに引き戻してくれた。

トーストにハムエッグ、コーヒーの用意をしながら
乾燥機からバスケットにまとめて衣類を移した。
ん、パンツの柄は見なかったことにしておこう(^^ゞ

8時…そろそろ起きてもらわなくちゃとノックし
そっと開けると、彼は半分起きていた、裸のままで…。
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「おはよう」の挨拶もどこへやら、いきなり出てきた台詞が
「パンツ一丁で大丈夫?」
「あ、はい、外で寝るより全然暖かかったんで」
いや、そういう意味合いじゃなくて…
とりあえず彼の衣類の詰まったバスケットで前を隠した(^^ゞ
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その場しのぎにつけたテレビからは
朝から台風情報で満載だった

「ヤバイよ。台風もうすぐ追いついちゃうよ。
 早く出発しないと…」
「あ、はい、どこへ?」
「どこへって…君、どこへ行くつもりなの?」
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「あ、はい、目的地はないんです。」
「目的地がない…どうして?」
「目的地があると、そこで終わっちゃうでしょ。
 たとえば目的地を青森って言っちゃうと、
 北海道へは行かれないし。
 僕、人生にも目的地がないみたいなんです。」
じゃあ目的地をオレにしちゃえば…
とあやうく口をすべらせそうになる。
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ふうん、目的のない人生ねぇ…
あれっ?ところでオレの人生の目的って何だっけ?
て言うか、オレが彼を乗せた目的っていったい?
二人の終着点はどこにあるのだろう?
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「とにかく、さっさと支度しようよ。これで暴風域に入ったら
 次に誰かに拾ってもらうの大変だよ。」
「…あ、はい…」
彼の返事にしばしの間があったように聞こえたのは
きっと彼かオレのどちらかが、この時を引き止めているから
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台風の接近が、彼と過ごす残り時間を
あと数時間に押し縮めていた…

        ―次回、最終話に続く―






あらしのよるに…第2話「乾燥中」

突然のりりしいエトランゼに
部屋の空間が妙に揺らいで見えた。
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「とりあえず何か食う?」
「あ、はい、いただきます。」
今どきの若い子は遠慮を知らないのか、
いや、無用の遠慮をしないことが
彼なりの気遣いだということを
後になってようやく気づくことになる。
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彼は出された料理はすべてたいらげた。
どんなに不味くても、腹一杯になっていても
嫌な顔一つせず、喜んで食べてくれた。
そうしてオレたちはお互い向かい合い
話をはずませ、何度となく見つめ合っては
微笑みを交わした。
4時間前は見ず知らずの他人だったなんて…。
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「じゃあシャワーでも浴びる?」
「あ、はい、入ります。」
「脱いだ物は洗濯して乾燥しとくから、
 ついでに洗いたい物があれば入れておいて。」
「あ、はい、助かります。」
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しんと静まり返った部屋に
シャワーの音だけが途切れ途切れに聞こえてくる。
隣室にめったに敷かない来客用の布団をしつらえる。

「上がりました。」
「ドライヤーは洗面台にあるから。
 あと君の布団はそっちの部屋。
 オレ、シャワーしてくるけど
 待ってなくていいから。
 疲れただろ。寝てていいよ。」
そこまで一気にまくしたてて
風呂場に飛び込んだ。
ボディーソープの甘い香りに混じって
彼の体臭がかすかに残っていた。
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この後、もちろんオオカミになどなれない。
お互いに健全な夜を過ごすことを固く決めていた。
それがオレを信じてついてきてくれた彼への
真摯なおもてなしだから。

ただ、どうしても誘惑に負けてしまったのが
風呂上がり、彼に貸してやったバスタオルに顔をうずめ
己の裸体の隅々まで拭いてしまったことだけ
ここに懺悔します。
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その夜オレたちはふすまを隔てた2つの部屋で
どちらからともなく深い眠りに落ちた。
まるで夢の途中から、また別の夢に突入した二人のように
心だけは寄り添いながら。
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台風が次第に近づいてくる気配にも気づかぬままに
彼の身につけていたもの一切の入った乾燥機のドラムだけが
夜の静寂の中、ヴィーンと音を立てて旋回していた…

 ―第3話に続く―






あらしのよるに…第1話「北へ」

そこに君がいた。
北風吹きすさぶ夕刻に
Tシャツ一枚で震えていた。
「乗せてください」と書かれた
段ボールの切れ端を持って。
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いったんは速度を落とさず通り過ぎたが
魔が差したか、やがてUターンすることになる。
それが彼との数奇な旅の始まりだった。
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「どこまで行くの?」とかけた声に驚いて
振り向く彼の真っ直ぐな瞳に射すくめられ
内心オレの方がうろたえてしまった。
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「少しでも北へ」
「北へは行かないけど、東なら行くよ。」
「じゃあ東へ」
「乗って」
「ありがとうございます!」
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それがヒッチハイカーのマナーなのか
助手席を遠慮して後部座席に乗り込んだ。
バックミラーに映る彼と視線が合う。
目をそらさずににっこりと笑う彼に
思わずオレの方が目を伏せた。
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やがて辺りは夕闇に包まれ
ヘッドライトに照らされながら
いずことも知れぬ目的地へと
二人はひた走ることになる。
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二言三言の会話で、彼の素性はわかった。
出身は沖縄(どうりで南国風のイケメンだ)
大学を卒業し、国家試験を受け、結果が出るまでの間
1人であてのない旅がしたかったとのこと。
まるで追っ手の台風から逃れてきたような…。
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1時間後…
「すいません。雨でぬれちゃって…
 着替えてもいいですか?」
「えっ?あぁ、どうぞ…」
返答を待たずに脱ぎ始めた彼の筋肉質の体は
いさぎよく白く闇に浮かんだ。
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2時間も走ったろうか…高速道のSAで
「で、今日はどこに泊まるの?」
「考えていませんでした。野宿でもしようかと。」
「それじゃあ凍え死んじゃうよ。」
「じゃ近くのバックパッカーの宿に行きます。」

その日は連休半ばでバックパッカーの宿は
どこも満室で断られているようだった。

「やっぱりダメでした。」
「…じゃあ、オレんちに来る?」
「…あ、はい、お願いします。」
至極当然の成り行きのように、オレたちは引き返し
一条の光に吸い寄せられるように一軒家を目指した。
通い慣れた道のはずなのに今夜は
やけに遠く神秘的に曲がりくねっていた。

…こうしてオレたちの逃避行は始まることになる。
そして行き先がわからないのは、彼ではなく
間違いなくオレの方だった…。
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              ―第2話へと続く―

※この記事は以前実況をライブで配信したものです。




 

ウラシマ

以前どこかでお会いしましたか?

そう聞きたくなるような見覚えのある
イケメンが目の前にいた。

しかも全裸で…
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相変わらず顔も身体も美しかった。

それだけに強烈な印象となって覚えていた。

しかしいったい、いつ、
どこで会ったのかが思い出せない…

一期一会の行きずりの相手だったか、

それとも数多いるボーイの1人だったか、

あるいはGVに出演していた男優さんか?

でもそれなら、身体1パーツを見ただけで

もう一つの記憶が呼び覚まされるはずだが

いくらソコを凝視しても思い出せない(笑)
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思い悩みながら彼をくまなく観察していた。

彼もやがて、オレの視線に気がついたが

適度な距離間で相変わらず全身を開放していた

思案に思案を重ね、やっと思い出した。
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全裸でいたから、わからなかったのだ。

以前出会った時は細身のスーツを着てたから

こんなに筋肉質で野性的な体型とは
結びつかなかったのだ

そうか、こんな見事な身体をしていたんだね

久しぶりに見られてよかった…

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しかしそのブランクの年数を数えてみた時

恐るべき事実に気がついてしまった

以前彼と会ったのは

20年近く前になるはずだった

まさか生身の人間が20年もの間

肉体的に年をとらずにいられるわけがない

ところが目の前の彼は
以前と全く同じ美しさであるばかりか

いや、むしろ以前より若返っていた

どう見ても20代前半にしか見えない

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あり得ない

もし現実に合理性のいく解釈をするならば

それは20年前の彼と瓜二つの赤の他人が

今目の前にいると考えるのが自然だ

しかし見れば見るほど20年前の彼だった

しかも当時見られなかった彼の肉体の
すべてが今は包み隠さずに披露されていた

それは想像以上に神々しかった
とと

神は時として、小粋な悪戯を仕掛けてくる

オレは何とはなしに、つぶやいていた

「ウラシマ…?」

不思議そうに小首を傾げた彼のしぐさは

20年の時を経ても変わらなかった…

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昔、昔ウラシマは
助けたカメに連れられて
龍宮城に行ってみれば…
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絵にも描けない美しさ
関東_浦島太郎
朽ち果てることのない美もあってほしい…
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ラシン

初めまして。ラシンです。
ほぼ「裸身」ですが
ここを「羅針盤」として
進んでいく方向を
模索したいと思います

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