2035年1月3日
目が醒めると
世界も僕も一変していた。
退院に迎えに来たのは一瞬
亡くなったはずのお袋かと思ったが
いっそう瓜二つになってきた
老け込んだ妹だった。
運転手のいないタクシーは
自動運転のまま緩やかに発進し
その後リニアに乗り換えた。
車内の乗客のほとんどが
淡色のサングラスをかけていた。
それが進化したスマホだと聞き
振動ゼロの車内で、独り身を震わせた。
会話の一言をする間もないままに
生まれ故郷の生家に戻ったが
解体寸前の古民家が立ち尽くす
廃墟のような光景だった。
中に入ると自分の荷物は
ここへ引っ越して来たかのように
山積みにされていた。それ以外には
僕の勤め先やアパートはもちろん
お袋が存在していた空気さえも
跡形もなく完全に消えていた。
とりあえず荷物の残骸から
この時代に起動できるかわからない
当時は最新機種だったパソコンを
掘り出して立ち上げた。
バージョンアップ要請と未読メールは
数千件あったが
そんなものには目もくれず
ネットでいつものサイトへと飛んだ。
しかしそこはすでに
「お探しのページは存在しません」
の貼り紙しか出て来なかった。
僕が植物と化し生き長らえた10年間で
それまでのすべてを失った。

僕同様に役立たずのレッテルを貼られた
パソコンは、往生際が悪くいまだ
消え入りそうな鈍い光を放っていたが
それが突如息を吹き返したかのように
閃光を瞬かせたのは、その時だった。
画面には、A I画像の席巻した未来に
希少な生身の男たちの「生前」の姿が
遺影のように映し出された…









オカエリナサイ
ナガイコトオマチシテオリマシタ
ワタシタチノジダイハ
イツデモココニアリマス
エイエンニ…

7年前の日付で、最後の訪問者が
お別れの挨拶を遺しておいてくれた
のが目に映った。
僕は薄れゆく意識の中で
「新しい記事を書く」の選択肢を
かろうじて1クリックして
再び永い眠りについた…

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