ギリシャ神話で最も強く、しかも美しい男神を
挙げるとしたら、おそらくこのお方…
そう、太陽神アポロン
彼は他にも、音楽の神、医学の神、予言の神、
羊飼いの守り神等、多数の異名を連ねるが、
その永遠に若々しい理想の青年像と
文武に秀でた全知全能の神としての完璧なまでの神格は
もはや「絶対王者」としか言いようがない。
さて、光り輝く天下人、アポロンなのだが
彼も人の親であり、何人かの息子がいるのを
ご存知だろうか。
ところが、その息子たちは一様に影が薄くて、
よほど精通してなければ、名前さえも浮かばぬだろう。
まさに親の七光りのために、日の目を見なかった
息子たちは、父親の威光に到底及ばぬどころか
それぞれに不幸な人生を背負っていたのだ。
今回は、その中の最も哀れな息子
パエトーンを紹介したい。
パエトーンは母親から常々
「あなたの父親は太陽神アポロンだ」
と聞かされていたが、
彼の友だちは1人として
その話を信じてくれない。
何とか自分があのアポロンの息子だと
証明したいパエトーンは
アポロンの宮殿を訪ね
一度でいいから父と同じように
あの日輪の馬車を走らせたいと懇願する。
一度は断ったアポロンも
父の名を語れぬ息子を不憫に思い
ついには馬車を貸すのだが…
もともと人知を超越した神の乗り物は
たやすく操縦できるはずがなく、
突如目の前に現れた大サソリに馬は暴走し
天空と地上をことごとく焼き焦がしてゆく。
やむなく大神ゼウスが雷でこれを射て
パエトーンは燃えさかる炎に包まれ
地上に墜落していく。
…父さん、許してください。
だけどオレは一度でいいから、
父さんのように輝きたかっただけなのです…
ああ、哀れな息子、パエトーンよ
お前こそが、私の後を継ぐ者として期待をかけたのだ…
お前にすべての光を託し、一線を退いた私は
やがて静かに光を閉じていくことを夢見た
今日まで私は太陽神として、あまねく地上に
光と熱を降り注いできた。
すべて分け隔てない愛の証として…。
けれども私は、この世界のすべてを
深く愛していたわけではなかった。
そう、お前を失って初めてわかったのだ。
私とて、万能な博愛主義者ではない。
1人の息子を愛する、愚かな1人の父親に
すぎないのだよ。
しかし、悲しみのどん底に突き落とされてもなお
私はお前の分まで輝き続けねばならぬ。
少なくとも、あと50億年は…。
それは辛く長い老境の始まりなのかも知れない。
願わくは、もし生まれ変われるのであれば
私は太陽ではなく、月となって
お前の光に、照らされたかった…
この神話こそがまさに
僕が終生背負っていく極限の悲しみなのだと
いつか誰かに気づいてもらえるでしょうか…
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挙げるとしたら、おそらくこのお方…
そう、太陽神アポロン
彼は他にも、音楽の神、医学の神、予言の神、
羊飼いの守り神等、多数の異名を連ねるが、
その永遠に若々しい理想の青年像と
文武に秀でた全知全能の神としての完璧なまでの神格は
もはや「絶対王者」としか言いようがない。
さて、光り輝く天下人、アポロンなのだが
彼も人の親であり、何人かの息子がいるのを
ご存知だろうか。
ところが、その息子たちは一様に影が薄くて、
よほど精通してなければ、名前さえも浮かばぬだろう。
まさに親の七光りのために、日の目を見なかった
息子たちは、父親の威光に到底及ばぬどころか
それぞれに不幸な人生を背負っていたのだ。
今回は、その中の最も哀れな息子
パエトーンを紹介したい。
パエトーンは母親から常々
「あなたの父親は太陽神アポロンだ」
と聞かされていたが、
彼の友だちは1人として
その話を信じてくれない。
何とか自分があのアポロンの息子だと
証明したいパエトーンは
アポロンの宮殿を訪ね
一度でいいから父と同じように
あの日輪の馬車を走らせたいと懇願する。
一度は断ったアポロンも
父の名を語れぬ息子を不憫に思い
ついには馬車を貸すのだが…
もともと人知を超越した神の乗り物は
たやすく操縦できるはずがなく、
突如目の前に現れた大サソリに馬は暴走し
天空と地上をことごとく焼き焦がしてゆく。
やむなく大神ゼウスが雷でこれを射て
パエトーンは燃えさかる炎に包まれ
地上に墜落していく。
…父さん、許してください。
だけどオレは一度でいいから、
父さんのように輝きたかっただけなのです…
ああ、哀れな息子、パエトーンよ
お前こそが、私の後を継ぐ者として期待をかけたのだ…
お前にすべての光を託し、一線を退いた私は
やがて静かに光を閉じていくことを夢見た
今日まで私は太陽神として、あまねく地上に
光と熱を降り注いできた。
すべて分け隔てない愛の証として…。
けれども私は、この世界のすべてを
深く愛していたわけではなかった。
そう、お前を失って初めてわかったのだ。
私とて、万能な博愛主義者ではない。
1人の息子を愛する、愚かな1人の父親に
すぎないのだよ。
しかし、悲しみのどん底に突き落とされてもなお
私はお前の分まで輝き続けねばならぬ。
少なくとも、あと50億年は…。
それは辛く長い老境の始まりなのかも知れない。
願わくは、もし生まれ変われるのであれば
私は太陽ではなく、月となって
お前の光に、照らされたかった…
この神話こそがまさに
僕が終生背負っていく極限の悲しみなのだと
いつか誰かに気づいてもらえるでしょうか…
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ところでこの記事を読んだ際に、ダビデを思い出しました。
ダビデも王様になった人です。
「ダビデ像」は作った人によっては体格が青年だったり少年だったりしますが、実際のところ描写したとされる「投石の決闘」の場面では何歳だったんでしょう?
ラシン
がしました