ギリシャ神話で最も強く、しかも美しい男神を
挙げるとしたら、おそらくこのお方…
0012[1]
そう、太陽神アポロン
2003.6.3_web-1-728x409
彼は他にも、音楽の神、医学の神、予言の神、
羊飼いの守り神等、多数の異名を連ねるが、
その永遠に若々しい理想の青年像と
文武に秀でた全知全能の神としての完璧なまでの神格は
もはや「絶対王者」としか言いようがない。
photo-436-voyance-divinat
さて、光り輝く天下人、アポロンなのだが
彼も人の親であり、何人かの息子がいるのを
ご存知だろうか。
ところが、その息子たちは一様に影が薄くて、
よほど精通してなければ、名前さえも浮かばぬだろう。
まさに親の七光りのために、日の目を見なかった
息子たちは、父親の威光に到底及ばぬどころか
それぞれに不幸な人生を背負っていたのだ。
今回は、その中の最も哀れな息子
パエトーンを紹介したい。
97a6eb78-s
パエトーンは母親から常々
「あなたの父親は太陽神アポロンだ」
と聞かされていたが、
彼の友だちは1人として
その話を信じてくれない。
何とか自分があのアポロンの息子だと
証明したいパエトーンは
アポロンの宮殿を訪ね
一度でいいから父と同じように
あの日輪の馬車を走らせたいと懇願する。
3-13
一度は断ったアポロンも
父の名を語れぬ息子を不憫に思い
ついには馬車を貸すのだが…
2B9E01C6-C7F1-441E-B87A-2EF2577B7759
もともと人知を超越した神の乗り物は
たやすく操縦できるはずがなく、
突如目の前に現れた大サソリに馬は暴走し
天空と地上をことごとく焼き焦がしてゆく。
やむなく大神ゼウスが雷でこれを射て
パエトーンは燃えさかる炎に包まれ
地上に墜落していく。
3-11
…父さん、許してください。
だけどオレは一度でいいから、
父さんのように輝きたかっただけなのです…
7123c9b9be7f0b3e311b4c381e563ccc--white-photography-hot-guys
ああ、哀れな息子、パエトーンよ
お前こそが、私の後を継ぐ者として期待をかけたのだ…
お前にすべての光を託し、一線を退いた私は
やがて静かに光を閉じていくことを夢見た
sea-4087021_960_720
今日まで私は太陽神として、あまねく地上に
光と熱を降り注いできた。
すべて分け隔てない愛の証として…。
けれども私は、この世界のすべてを
深く愛していたわけではなかった。
そう、お前を失って初めてわかったのだ。
私とて、万能な博愛主義者ではない。
1人の息子を愛する、愚かな1人の父親に
すぎないのだよ。
72bfca12-s
E3838DE382A4E3839EE383BCE38
d478abd9-s
しかし、悲しみのどん底に突き落とされてもなお
私はお前の分まで輝き続けねばならぬ。
少なくとも、あと50億年は…。
それは辛く長い老境の始まりなのかも知れない。
DSC8049
願わくは、もし生まれ変われるのであれば
私は太陽ではなく、月となって
お前の光に、照らされたかった…
sky-583724_1280-768x576
この神話こそがまさに
僕が終生背負っていく極限の悲しみなのだと
いつか誰かに気づいてもらえるでしょうか…
合わせて読みたい父子はこちら