1998年長野オリンピック開会式で
小澤征爾が指揮する第九が世界初の
五大陸同時演奏で披露されたのは

もはや伝説でしかありませんが

その最終リハーサルの時の話です。

真冬の雪の多い長野の地に

小澤さんをはじめ、錚々たるメンバーが集結した。

ポーランドからソプラノのソリストが

中国からはアルト、アメリカからはテノールと

将来を期待された顔ぶれが世界各国から到着する。

 

その時、ロシアから駆けつけるはずのバスのソリストが

いつまでたっても姿を見せない。

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バス不在の最終リハでは、冒頭ソロと合唱の掛け合いや

後に続く四重唱が練習できない。

会場はロシア人のルーズさを暗黙のうちに非難していた。

大雪の中、ロシアから
何十時間もかけてやってくるというのに…

 

もはやリハも半ばを過ぎ、皆がバスをあきらめたその時

まさに彼は入ってきたのだ。
ところがその姿は…

※できるだけ当時の彼を再現したイメージ画像です。
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彼の容姿に、おそらくそこにいた全員が息を飲んだ。

長身でスリムなスタイルに、一目で長い脚とわかる黒パン

上もまた黒のタートルネックのタイトなセーターで

彫像のような彫りの深い真っ白な肌との極限のコントラスト

そして何よりも美しかったのは、金髪のストレートな長髪を

後ろで結わえた端正さで

素直に遅刻をわび頭を下げた時には

もはや一人残らず、彼を無条件で許し歓迎していた。

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その彼から、ロシアの荒涼とした大地を思わせる

バスの響きが流れた時

僕は不覚にも、震えと歓喜の涙が止まらなかった…

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ロシアのバス歌手デニス・セドフ

…その時はロン毛だったのです。

あれから20年余りの時が過ぎ
彼もまた年輪を重ね
当時のロン毛の面影こそありませんが
あの時耳にしたバスの響きは
さらに奥深さを増し、今も健在です。

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クラシックのバスソロというのは
現代の流行の歌とは程遠い、いかめしさがありますが
そうとわかってお聴きいただけるとありがたいです。
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曲はバスソリストの登竜門と言われる
ロシア民謡「ヴォルガの舟歌」で
大地の神の重低音を味わってみてください。


ちなみにこの歌では普通のレよりも
1オクターブ低いレの音が出てきます。

もう一つ、デニス・セドフ自身ではないのですが、
当時の彼の若かりし頃の姿を彷彿させる
金髪のロシア青年のバスソロをお聴きください。
なかなか歌い出さないので、しびれを切らしますが、
(実際に彼の低音が聴けるのは2分47秒後です。)
待ってる間も、目が泳いじゃっててカワイイです。

一般にバスのソリストは、普通のミの
1オクターブ下のミの音まで軽々出してきます。
僕も調子のよい時はかろうじて出せます。
コツはのどぼとけを3cmぐらい下に下げると出ます。
低音に自信があれば、ぜひチャレンジしてみてください。
たまには重低音で歌ってみるのも
男性的にずっしり響いて、イケるかも知れません。

男声の二重唱を集めてみました
たまには低音パートにシビれてみましょう。