子どもの頃に「七瀬ふたたび」という
SFを読んだことを、ふと思い出しました。

主人公「七瀬」は人の心が読める超能力者です。
「家族八景」という小説の中に初めて登場し、
家政婦として、いろいろな家族に入り込みながら
それぞれの人間の裏感情や腹黒い欲望、
八軒の家族の虚偽をあぶり出していくという
まさに「家政婦は見た、エスパー版」
なのです。

その七瀬が二作目の「七瀬ふたたび」では
これまで超能力者ゆえに孤独だった彼女が
自分と同じ境遇でありながら異種の超能力をもった
様々な仲間とめぐりあい、
まるで家族のように共同生活を始めていくのです。
※以下、僕のイメージしたキャスティングで
 ここに劇場版に仕立ててみました。
(故人を偲ぶお盆バージョンでもあります。)

七瀬と同じく人の心を読みとるテレパスの子ども「ノリオ」
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未来がわかる予知能力者の「恒夫」
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手を触れずどんな物でも動かす念動力者の「ヘンリー」
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どんな時間、場所へもテレポーテーションできる
永遠不滅の超能力者、時空航行者の「藤子」
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そしてここに七瀬自身を加えると
まさに最強無敵のエスパー5人組だったのです。
ところが、これに対抗し、
超能力者は国家を不安に陥れる人類の敵と見なし
秘密特殊部隊が編成され「超能力者全員抹殺計画」が
水面下で着々と遂行されていくのです。

5人で最初の犠牲者となったのは
予知能力者の恒夫でした。7月18日のことです。
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彼はいつからかまったく同じ予知夢しか
見ることができなくなったのです。
それは何とも美しい夕焼けの光景でした。
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そこが自分の死に場所だと気づいた時には
一発の銃弾に貫かれ、その最期に瞳に映った夕焼けを
テレパシーで七瀬に送ったのでした。
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残された4人は恒夫の死を悲しむ間もなく
迫りくる追っ手から逃げていきます。
けれどもゾンビのように何度倒しても
後から後から湧き出て来るあまりの執拗さに
ヘンリーは念動力の力を使い果たします。
昨年1月26日、墜落事故で命を落としました。
生きていればこの8月23日に
43歳の誕生日を迎えたところでした。
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その特殊能力から最も生存可能な立ち位置にいた
藤子は、20分後の全員抹殺される未来から
瀕死の状態で七瀬の元に戻り
「あなただけは逃げて」と伝えて息絶えました。
タイムラグがあるため、彼女の絶命は
5人中の最後となり、9月27日のことです。
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そして最も短い生涯だった少年ノリオは
「オネエチャン、ボク、シンジャッタ…」と
テレパシーで七瀬に伝え、小さな命の灯が消えます。
8月31日の水難でしたが、
彼の死は翌年1月5日まで伏せられました。
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1人残った七瀬は、4人の待ち受ける団らんの風景を
藤子に夢見させてもらいながら
絶え間ない銃声が響く中で、ふと微笑んで、
虚無の世界へと旅立っていくのでした。
まもなく9月14日に一周忌を迎えます。
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ああ「七瀬ふたたび」ふたたび…
僕だったら上記のキャスティングで
メガホンを取ります。
…もう二度と、かなわないことですが…

11年前の筒井康隆作家50周年記念の時の
劇場版予告編はこちら
恒夫(了)役の田中圭さん
ヘンリー役のソフトバンクのお兄さんが
七瀬を追悼しているかのように目に映りました。

七瀬さん、どうか無二の仲間たちとともに
天国でお幸せに…
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大切なものが次々と消えていく物語は
哀しいけど、何かがずっと心に残ります…。