未明に目が覚めた。
乾燥機の音が止まっていた。
昨日はおかしな夢を見たのかと思ったけど、
玄関の見たことのない白いスニーカーが
現実、いや夢の続きに引き戻してくれた。

トーストにハムエッグ、コーヒーの用意をしながら
乾燥機からバスケットにまとめて衣類を移した。
ん、パンツの柄は見なかったことにしておこう(^^ゞ

8時…そろそろ起きてもらわなくちゃとノックし
そっと開けると、彼は半分起きていた、裸のままで…。
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「おはよう」の挨拶もどこへやら、いきなり出てきた台詞が
「パンツ一丁で大丈夫?」
「あ、はい、外で寝るより全然暖かかったんで」
いや、そういう意味合いじゃなくて…
とりあえず彼の衣類の詰まったバスケットで前を隠した(^^ゞ
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その場しのぎにつけたテレビからは
朝から台風情報で満載だった

「ヤバイよ。台風もうすぐ追いついちゃうよ。
 早く出発しないと…」
「あ、はい、どこへ?」
「どこへって…君、どこへ行くつもりなの?」
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「あ、はい、目的地はないんです。」
「目的地がない…どうして?」
「目的地があると、そこで終わっちゃうでしょ。
 たとえば目的地を青森って言っちゃうと、
 北海道へは行かれないし。
 僕、人生にも目的地がないみたいなんです。」
じゃあ目的地をオレにしちゃえば…
とあやうく口をすべらせそうになる。
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ふうん、目的のない人生ねぇ…
あれっ?ところでオレの人生の目的って何だっけ?
て言うか、オレが彼を乗せた目的っていったい?
二人の終着点はどこにあるのだろう?
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「とにかく、さっさと支度しようよ。これで暴風域に入ったら
 次に誰かに拾ってもらうの大変だよ。」
「…あ、はい…」
彼の返事にしばしの間があったように聞こえたのは
きっと彼かオレのどちらかが、この時を引き止めているから
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台風の接近が、彼と過ごす残り時間を
あと数時間に押し縮めていた…

        ―次回、最終話に続く―