突然のりりしいエトランゼに
部屋の空間が妙に揺らいで見えた。
「とりあえず何か食う?」
「あ、はい、いただきます。」
今どきの若い子は遠慮を知らないのか、
いや、無用の遠慮をしないことが
彼なりの気遣いだということを
後になってようやく気づくことになる。
彼は出された料理はすべてたいらげた。
どんなに不味くても、腹一杯になっていても
嫌な顔一つせず、喜んで食べてくれた。
そうしてオレたちはお互い向かい合い
話をはずませ、何度となく見つめ合っては
微笑みを交わした。
4時間前は見ず知らずの他人だったなんて…。
「じゃあシャワーでも浴びる?」
「あ、はい、入ります。」
「脱いだ物は洗濯して乾燥しとくから、
ついでに洗いたい物があれば入れておいて。」
「あ、はい、助かります。」
しんと静まり返った部屋に
シャワーの音だけが途切れ途切れに聞こえてくる。
隣室にめったに敷かない来客用の布団をしつらえる。
「上がりました。」
「ドライヤーは洗面台にあるから。
あと君の布団はそっちの部屋。
オレ、シャワーしてくるけど
待ってなくていいから。
疲れただろ。寝てていいよ。」
そこまで一気にまくしたてて
風呂場に飛び込んだ。
ボディーソープの甘い香りに混じって
彼の体臭がかすかに残っていた。
この後、もちろんオオカミになどなれない。
お互いに健全な夜を過ごすことを固く決めていた。
それがオレを信じてついてきてくれた彼への
真摯なおもてなしだから。
ただ、どうしても誘惑に負けてしまったのが
風呂上がり、彼に貸してやったバスタオルに顔をうずめ
己の裸体の隅々まで拭いてしまったことだけ
ここに懺悔します。
その夜オレたちはふすまを隔てた2つの部屋で
どちらからともなく深い眠りに落ちた。
まるで夢の途中から、また別の夢に突入した二人のように
心だけは寄り添いながら。
台風が次第に近づいてくる気配にも気づかぬままに
彼の身につけていたもの一切の入った乾燥機のドラムだけが
夜の静寂の中、ヴィーンと音を立てて旋回していた…
―第3話に続く―
部屋の空間が妙に揺らいで見えた。
「とりあえず何か食う?」
「あ、はい、いただきます。」
今どきの若い子は遠慮を知らないのか、
いや、無用の遠慮をしないことが
彼なりの気遣いだということを
後になってようやく気づくことになる。
彼は出された料理はすべてたいらげた。
どんなに不味くても、腹一杯になっていても
嫌な顔一つせず、喜んで食べてくれた。
そうしてオレたちはお互い向かい合い
話をはずませ、何度となく見つめ合っては
微笑みを交わした。
4時間前は見ず知らずの他人だったなんて…。
「じゃあシャワーでも浴びる?」
「あ、はい、入ります。」
「脱いだ物は洗濯して乾燥しとくから、
ついでに洗いたい物があれば入れておいて。」
「あ、はい、助かります。」
しんと静まり返った部屋に
シャワーの音だけが途切れ途切れに聞こえてくる。
隣室にめったに敷かない来客用の布団をしつらえる。
「上がりました。」
「ドライヤーは洗面台にあるから。
あと君の布団はそっちの部屋。
オレ、シャワーしてくるけど
待ってなくていいから。
疲れただろ。寝てていいよ。」
そこまで一気にまくしたてて
風呂場に飛び込んだ。
ボディーソープの甘い香りに混じって
彼の体臭がかすかに残っていた。
この後、もちろんオオカミになどなれない。
お互いに健全な夜を過ごすことを固く決めていた。
それがオレを信じてついてきてくれた彼への
真摯なおもてなしだから。
ただ、どうしても誘惑に負けてしまったのが
風呂上がり、彼に貸してやったバスタオルに顔をうずめ
己の裸体の隅々まで拭いてしまったことだけ
ここに懺悔します。
その夜オレたちはふすまを隔てた2つの部屋で
どちらからともなく深い眠りに落ちた。
まるで夢の途中から、また別の夢に突入した二人のように
心だけは寄り添いながら。
台風が次第に近づいてくる気配にも気づかぬままに
彼の身につけていたもの一切の入った乾燥機のドラムだけが
夜の静寂の中、ヴィーンと音を立てて旋回していた…
―第3話に続く―