昨年4月に配属になった直属の部下なんだけど
某国立大学卒業、大学院博士課程修了のマジメ君
26歳独身、彼女いない歴26年と自他ともに認める。
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そのマジメ君に対してオレは強い嫌悪感を抱いている。
そう感じたのは、早くも新任歓迎会のその日から。
会場は当時は盛況だった温泉旅館だったんだけど、
せっかく温泉に来たんだから、
みんなで一風呂浴びようって、こぞって繰り出したんだ。
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マジメ君はとにかくオレと話がしたかったみたいで
脱衣所に入っても、おしゃべりをやめそうもない。
オレの方は早く風呂に飛び込みたい一心で
順次、服を脱いでいってるのに
マジメ君の方はいっこうに服を脱ぐ気配がなく
ただオレを真正面から見つめて滔々と話し続けている。
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「どうしたの?風呂入らんの?」と聞くと
風邪気味だから、と言うんだけど、じゃあなぜここに来た?
オレもうあと一枚しか残ってないんだけど…
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…じぃーっと見ている、オレの顔からつま先まで…
なんか今日に限ってタオルで前を隠しながら
もじもじパンツを下ろすと
ゴクッとマジメ君の唾を飲み込む音が聞こえた。
オレは急いで風呂場へ駆け込んだけど
背後から視線が突き刺さる~オレの自意識過剰?
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マジメ君はその日から今日まで
オレの至近距離にいつも入り込んで来て
ふり返るとほぼ百発百中で視線が合ってしまい
昼食時もオレの左隣席を陣取り
挙句にはオレと同じ歩幅で同じ足から
オレの隣をぴったり同じ足取りで歩く。
他の目から見ても尋常じゃないこの密着ぶりに
背後霊でも背負っているような悪寒を感じてるのは
オレだけだろうか?
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もちろん直属の部下だから
仕事のことは一からすべて教え
認めるところは認めてきたけれど…
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たまたま残業しなくちゃならなくて
二人きりになる夜は
正直こわいのなんのって、耐えられない。
「先に帰っていいよ。」
「いえ、まだ何もヤッてないのに帰れません。」
「…じゃあオレ先に帰るわ。」
「一緒に帰りましょうか?」
「…やっぱお前だけ帰れよ。」
オレは被害妄想でパニック寸前になる。
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これがオレ好みのタイプだったら、
どうなっていたか分からないけど
そうじゃないから思いっきりブレーキが踏み込める。
仕事上最もやりにくい、
こいつこそ職場の危険人物だと思ってた…
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でも、ふり返ると、オレの半生の中で
マジメ君のようなキャラは
常に目の前に現れ、そいつがいなくなると
また別の誰かが、マジメ君になり替わる。
オレは一生マジメ君のような危険人物に
つきまとわれてしまう運命なのかも…

いや、もしかしたら本当の危険人物は、
マジメ君たちを無自覚に誘惑している
オレの方かも知れないなと、今気づいた…
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