これはその昔、高校の現代国語のテストで
出題された問題文でしたが、
テスト問題としては、あまりに鮮烈だったので
今もストーリーを忘れずに覚えてました。
そのあらすじを記憶を元に復刻しましたので
今宵皆様とともに読み味わいたいと思います。

「記念写真」…たぶん作;赤川次郎

 高校生の弓子は、日常すべてに嫌気がさし、
学校をサボって、とある辺鄙な岬に来ていた。
そこで、明るく屈託のない親子連れと出会い、
「家族で記念写真を撮りたいので、
 シャッターを押してくれませんか?」
と頼まれる。
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 その四人家族があんまり幸せそうなものだから
よけいに虫の居所の悪くなった弓子は
わざと親子四人をフレームから外して
海の風景しか写っていない写真を撮って
カメラを返した。
「ざまあみろ、幸福なんて糞くらえ!」
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 その後も弓子は平日で客もまばらなレストランで
時間つぶしをしていると、再びその家族が乗り込み
楽しそうに食事し出す。
父親が決しておいしそうもない冷めたオムレツや
ハンバーグを頬張る子どもの撮影を始めたことに、
ますますうんざりし「アホくさ!」とぼやく弓子。
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 やっと一家がランチを終え、
レストランを出ようとしたその瞬間、
ふと弓子に一抹の疑問が生じる。
「私もサボってるんだけど、あの子たち、
 学校はどうしたんだろ?ズル休み?
 それにしたって、こんな陰気臭い海、
 学校休んで来るとこじゃない…」
 外を見るといつしかどしゃぶりの雨が降っていた。
それなのに家族は、傘も差さずに雨の中を
口を結んでゆっくりと進んで行く…それはまるで…
 テーブルの上には、置き忘れられたように
あのカメラと一枚の紙きれが…
「これを拾われた方へ
 私たち家族は、訳あって、これから遠い所へ
 参ります。このカメラのフィルムに写っている
 家族四人の写真を、どうか遺影に…」
 弓子は店を飛び出し、
岬へと向かう家族の巡礼を追い、
雨中矢のごとく駆け出していた。
「幸福だって?…幸福だって!」
 断崖には、海に身体を向け
身を寄せ合うひとつの「幸せそうな」家族がいた。
「やめて!あなたたちの記念写真は撮れていないの!
 だから、まだ死んじゃだめぇーー」
弓子は絶叫していた…
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このブログを読んでくださっている皆様の中にも
一見幸福そうなのですが、決して推察もできぬような
はかり知れぬ哀しみや運命を背負われている方も
いらっしゃるのではないでしょうか。
どうかこんな僕とでよければ
お互いこれからもこの世界を生きぬきましょうね。
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最後にこの物語の結末をお読みください。

 四人は驚いて振り向いた。
ようやく追いついた弓子は、その場に倒れ伏し
わあわあと泣き崩れた。
 やがて弓子の肩に小さく温かな手が触れた。
女の子の手だった。
「私、死ななくてもいいの?」
少女の顔にはかすかな光が戻った。
父親と母親は息子を挟んで抱き合っていた。
 こんなに皆で泣き果て、ずぶぬれになりながら
弓子は、自分が心から幸福と呼べるものに
包まれていく瞬間を、今、静かに撮り終えていた…
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