ヒロユキが死んだ
22歳の若さで
自らの鼓動を
自らの手で止めた

ウソだろ
信じられないから
涙も出なかった
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通夜でヒロユキと対面した時
その寝顔は美しかった
長いまつ毛が濡れていて
唇がきりっと締まっていた
キスしたくなるほど
いとおしく思った
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通夜の儀が始まり
訳のわからない
お経を聴きながら
僕は不謹慎な妄想に
おちていった

祭壇に近づき
棺のふたを開けると
そこには
白雪姫に出てくる王子様のような
ヒロユキが眠っていた
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ここでヒロユキに人工呼吸でもしたら
息を吹き返して
めでたしめでたしとなるかも
そう思い込んで
今までで一番濃厚なキスをした
温かい僕の息を吹き込む
何度も、何度も…
でも、ヒロユキは目覚めない
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だから今度はもっと
じかにヒロユキと触れ合いたくて
彼の着ていた経帷子をほどいた
スポーツマンのヒロユキの
日焼けした胸が見たかったのに
やけに色白にやせ細っていた
きっと寒くて凍えているんだ
だから僕の体温で彼を温めてやるんだ
僕も喪服を脱ぎ捨てた

今僕らはひとつの棺のベッドで
生まれた時の姿で抱き合っている
それも生と死の境界を越えて
僕の熱情が勝れば
二人とも生き返れるし
死という虚無が勝れば
二人ともあの世行きだ
いずれにせよ僕にとっては
この上なく本望だ
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けれども神様は不公平だ
やがて二人の体を
生と死に分けて
引き離した
僕にはもうヒロユキの肉体を永久に
引き戻すことができないんだと
悟るしか、なかった
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ふと我に返ると
火葬場の巨大な窯の前に
僕だけが
取り残されていた
ヒロユキの潤んだまつ毛に、唇
日焼けした弾力のある胸
サッカーをやるために施された
脚と尻の筋肉は
完全に白い煙と骨と灰に霧散した
ヒロユキがヒロユキとして
もうこの世には残っていなかった

でも僕は彼の終わりを信じない
ヒロユキは元の肉体を失っても
必ずどこかに存在している
そしてもう一度僕の元へ
一目でヒロユキだとわかる姿で
帰ってきてくれるんだ
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だから僕はこれからもずっと
ヒロユキを探し続ける
そしてヒロユキだと思える人に会ったら
その唇にキスをし
その体を抱きしめて
ヒロユキが宿っていることを
確かめてやるんだ
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いつしか何十年かが過ぎ
その間に僕はもう
何十人もの男と出会うだろうけど
もしかしてヒロユキ?という問いかけに
誰かこたえてくれるだろうか?
それでも僕は探し続ける
ヒロユキと呼べる男を
天と地の果てまでも…
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